この頃、日が長くなってきました。図書館の仕事を終えての帰り道、今日はきれいな夕陽を拝めました。
『子どもの本で平和をつくる』との出会い
『はなのすきなうし』を読みたくなったのは、ある絵本がきっかけでした。それは、以下の絵本です。
以前、松岡享子さんを追悼するブログを書きました。そのあと、彼女が関わった東京子ども図書館の由来を調べていくうちに、この『こどもの本で平和をつくる』に出会えました。この絵本に出てくるイエラ・レップマンという人も、子どもの本を通して明るい未来をつくった人なんですね。
『子どもの本で平和をつくる』のこと
第二次世界大戦後、きょうだい(姉と弟)の住んでいる町が攻撃され瓦礫だらけになってしまいます。弟の手を引いて歩く少女が、大きな建物の前に人びとの列を見つけます。少女は、その列が気になって弟と建物に入りました。すると、たくさんの本が並べてありました。外国語の本ばかりでしたが、絵がついているので何のお話か、予想できました。弟はある1冊の絵本をとても気に入って、決して手放そうとしません。その時、きょうだいはある女性と出会います。その人こそ、イエラ・レップマンでした。
イエラ・レップマンさんは、戦争で傷ついた子どもたちの心を癒そうと、子どもの本を集めて図書展を開きました。そして、ついに世界で初めての国際児童図書館(ミュンヘン国際児童図書館)を創設した人です。巻末には、イエラ・レップマンさんや、図書展についての解説もあります。
『はなのすきなうし』のこと
私は今このタイミングで、この『子どもの本で平和をつくる』に出会えたことに感謝しています。
今まで何気なく読み聞かせに使ってきた絵本が、鍵となる絵本として出てきたことに、特別なものを感じました。その絵本とは、
『はなのすきなうし』(岩波の子どもの本) マンロー・リーフ /著 ロバート・ローソン/イラスト 光吉 夏弥 /翻訳 1954年/初版です。先ほどの弟くんが手放そうとしなかった絵本がこれです。
戦争で傷ついた彼の心を癒したのは、強いヒーローや暴れん坊の牛ではなく、ただただ花の好きな牛だったのです。
これまで、私は何気なくこの絵本を読み聞かせてきました。その都度、図書館で借りて。けれども、今回、この絵本を手に入れたいと思い直し、手ごろな値段で手に入れました。改めて、あたたかな筆致で描かれた絵、無駄のない選び抜かれた言葉に心が震えました。そして、もしこれが外国語の本であったとしても、きっと理解できただろうと思えたのでした。
ただ願うこと
これまで3年ほどでしょうか。私たちはウィルスと闘ってきました。そこへきて、さらに戦争という殺し合いが続いています。核という傘を振りかざして、逃げる人々の命を奪って、何から何を守ろうというのでしょうか。
もちろん、私自身は安全な場所でただ文字を書いているだけです。けれども、私の心は、逃げ場を失い、絶望の淵に立たされている人々と共にあります。毎日、怖くてたまりません。昨日、ここ富山では、地震がありました。揺れは大きくありませんでした。それでも、爆弾が落ちてきた衝撃かと飛び起きました。ニュースで地震だと確かめるまで震えが止まりませんでした。
ただ花を愛してやまなかった牛のように、ただ平和を愛することは難しいことでしょうか。
お互いに信頼し合って、暮らすことはそんなに難しくないはずです。
そうなれるように、戦争が終わることを心から願っています。
素敵な文章を書かれていて とても素敵な才能だと思いました!