時々、ラジオ職人をやっています。先日、友人がラジオパーソナリティをやっている番組で、本の思い出を語り合う企画がありましたので、次の絵本の思い出を送りました。このブログでも発信してみたいと思います。
『パプーリとフェデリコ 1.森にくらして』 ガブリエル・バンサン/作 今江祥智・中井珠子/訳
この絵本はシリーズ絵本なのですが、その中でもこの1冊目の絵本に心癒されたので紹介します。
気ままに本でも書きながら暮らしたいと思い、森に入って世捨て人のような生き方を選んだパプーリだったんですが、ある男の子を預かってくれと頼まれてしまいます。みんなが手を焼いて、男の子自身も自分が何をしたいのか、わからない状態になっている問題児を、です。
はじめは、まっぴらごめん、という気持ちだったパプーリでしたが、男の子と過ごすうちに、お互いかけがえのない存在だと気づき、ずっと一緒に暮らしていこうと決めるお話です。
人は誰でも一人では生きていけません。でも、いつも誰かと一緒にいたり、世間の常識に合わせて生きていく、なんてことも難しいのです。この絵本は、誰もが、時々は、森などの静かで安全な場所に籠って、自分を癒し、本来の姿を取り戻すことが大切だと教えてくれています。
コロナ禍が長引いて、今までよりも窮屈さを感じたり、人に合わせて行動するのが常識になってしまっていた私は、この絵本に出会って、心癒され、本来の私らしさを取り戻そうと思いました。そして私の場合は、森ではなく、自分のアトリエでしばらく休暇を楽しむことにしたんです。おかげ様でずっと続けていきたい大切な手仕事を見直すことができました。そして本当に大好きなものが何なのか、気づくことができました。
昔、庶民の経済活動がお盆と正月の2回の支払いで成り立っていた頃は、「まぁ、今月はこれで凌ぐか……」でやり過ごしていたことも、今はそうはいきません。私は焦る必要もないのに焦り、怖がる必要もないのに、勝手に未来を不安なものにしていた節がありました。
でも一旦立ち止まって静かな時間を過ごしてみたんです。今、目の前の細やかな日常に気を配り、集中してみると、何ともない、大丈夫な時間があり、その連続の先に自分の未来があることに気づきました。
この絵本が気づかせてくれたんです。
デフォルメされた線画、サッと重ねられた水彩画、決して万人向きではないかもしれませんが、私はこの絵本をお勧めします。私の本の思い出でした。